ことしさいごの花火を見下ろす。

今までいくつもの勤務先があるわたし。
2ばんめの職場には名前が漢字では同じで読み方はちがう上司がいました。
彼女から「ベイビー」とよばれていたわたし。
とてもかわいがってもらっていました。
彼女の恋人の話、秋には結婚をすることもこっそり教えてもらったり。
その夏、おまねきをいただいて彼のお家(ご実家!)にゆくことになりました。
彼女の恋人は下町の生まれの人。
彼も彼のご家族もはじめて会うわたしに「きのうのつづき」のように話してくました。下町って大きな家族みたいな町。
彼の家の上空では隅田川の花火がひろがりました。
あんなにも真上を見上げるような花火ははじめてでした。
夏、この日の映像が突如、上映されます。
いまのわたしがそのころのわたしをぼんやりとながめているのです。

あと数日で9月のカレンダーもめくれるころ、
わたしは花火を見下ろします。
毎年、毎年。
こちらは毎年のことなので昨年のものですら上映されることはありません。
その花火とは曼珠沙華。
すーっとのびたその姿を見るころから注意深くなります。
このころの気温は変化がジグザグなので。
それは、あっというまにひゅー、ぱっかーってなってしまうから。
ことしのタイミングはとてもむずかしかった。
「ひゅー」を見ずにして「ぱっかー」になってた。
きっと今、「ぱっかー」のことしさいごの花火を見下ろしました。

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